横浜国立大学大学院環境情報研究院
自然環境と情報部門 自然環境専攻(HP)
当研究室では、人間活動が生態系へおよぼす影響を理解し、生態系の利用と保全の両立に貢献する生態系の管理や保全について研究しています。
本学の総合学術高等研究院(HP)の生物圏研究ユニットで、生態系激変予測ラボを運営しています。
本学の地域連携推進機構のNext Urban Labユニット「未来の都市空間を想定した自然共生型の都市ランドスケープデザイン」(LINK)を運営しています。
学部生・大学院生(修士・博士)を募集しています。
海外特別研究員・学振PD等の受け入れも歓迎いたします。
海外のフィールドでの調査プロジェクトや国際的な研究ネットワークに参画して、大規模な研究も展開できます。
研究内容などご相談があれば、下記連絡先から気軽にご連絡ください。
動物が“フン”を通じて種子を散布することは、植物が新しい場所に根付くための重要な生態系プロセスです。しかし、都市化によってアスファルトなどの舗装面が増えることで、種子が土壌に届く可能性が低くなり、その結果、種子の発芽率が低くなることが懸念されています。本研究では、世界有数の都市圏である東京・横浜の8つの自然林内にある舗装道路を対象に、フンの数を調査しました。その結果、都市化が進むにつれてフンの数が増えることが明らかになりました。また、舗装道路に堆積したフンには、自然林内に堆積したフンよりも、種子の数が少ない傾向がみられました。すなわち、都市部の舗装道路上に堆積したフンでは、種子がうまく散布されない可能性が考えられます。以上の結果は、都市部の森林管理において、都市化が種の多様性に与える影響だけでなく、種間の相互作用や生態系サービスへの影響も考慮する必要があることを示唆しています。
本研究では、世界最大の都市人口を誇る東京大都市圏の都市緑地において、植物群集を駆動する要因が都市化勾配によって変化することを明らかにしました。34個の都市緑地を対象に、植物群集を駆動する局所要因(土壌水分や草刈り強度など)と景観要因(緑地周辺の土地利用割合や緑地の空間パターンなど)を調査することで、それらの要因の相対的重要性が郊外部から都市中心部にかけて変化するが、その変化パターンが在来種と外来種で異なることを明らかにしました。これらの結果は、都市化による植物群集の変化を理解する上で、都市の規模や植物の在来性などを考慮することの重要性を示唆しています。
都市の発展に伴う資源需要の増加は、森林破壊に繋がります。森林面積減少を緩和する手法の一つとして、植林が挙げられます。本研究では、インド国内の地方行政区(州あるいは連邦直轄領)で行われた151の植林計画を対象に、行政区内の植林計画数がどのような要因と関連しているかを検証しました。結果、行政区内の植林計画数は、森林地域外に存在する樹木の数や、都市の発展度によって増加する傾向が認められました。一方で、植林が進んだ都市部では樹木の多様性が低く、外来種を含む、限られた樹種が優占することが分かりました。これらの知見は、都市における緑化目標の達成を見据えた植林計画を進めるうえで、各行政区内での土地利用の変化といった、地域特有の要素を考慮する必要があることを示唆しています。
本研究では、モンゴル草原を対象とした大規模なモニタリングデータを用いて、気候変動による乾燥化の進行によって、乾燥地の植物群集の安定性が急速に損なわれる可能性を世界で初めて実証しました。生態系安定性の激変は、乾燥度指数(年間降水量を年間可能蒸発散量で割った値で、低い値ほど乾燥度が高いことを示す)0.2付近を閾値として起きることが示唆されました。さらに、生態系の安定性は、植物群集において乾燥および温度ストレスへの耐性の異なる種が含まれかつ多様性が高いほど、高くなることがわかりました。このような生物多様性と生態系の安定性の関係性は、乾燥度の変化によらず、一貫して認められました。以上の結果は、環境変動に対する応答の異なる種を含む、多様性の高い植物群集を維持することで、将来的な乾燥化がもたらす生態系の安定性の激変を緩和できる可能性を示しています。
本研究では、横浜市における69の空き地(住宅用地として未利用の土地)を対象に、植物と微生物の群集集合プロセス(群集を構成する生物種の組成がどのように決定されるか)を検証しました。その結果、植物の種組成や機能的多様性は、空き地の空間配置によって説明されることが明らかになりました。微生物群集組成は、植物の種組成や空き地の空間配置によって説明されました。これらの結果より、空き地における植物と微生物の種組成は、主に分散制限により決定されていることが示唆されました。これらの結果は、都市生態系の機能とサービスにおいて重要な役割を果たす植物および微生物の群集組成を予測する際に役立つと考えられます。
樹木は陸上生態系の重要な要素として進化を遂げ、多様な生態系サービスを提供しています。樹木の多様性や分布の理解は、生態系サービスの定量化に不可欠です。しかし、世界的な生物多様性のホットスポットである南アジアでは、それらの知見が不足しています。本研究では、既存の植生データベースを用いて、南アジアに自生する3172種の在来樹種を特定し、インドやブータンの樹木多様性の保全の優先度の高さを明らかにしました。また、都市部における在来樹種の大半が「低危険種(LC)」に該当することが分かりました。これらの結果は、都市部における樹種選択において、種の多様性のみならずレッドリストのカテゴリーも加味すべきことを示唆しています。
海岸林は、防風や防砂の機能だけでなく、津波エネルギーの減衰や漂流物の捕捉といった、津波被害を軽減させる機能が東日本大震災を契機に注目されています。多くの海岸林は、クロマツ単植林であるため、クロマツ林の密度や樹木の配置を工夫することで、津波被害を最小限に抑える方法に焦点が当てられてきました。本研究では、樹種の多様性に着目し、津波イベント前後の衛星・航空写真を用いて、東日本大震災における津波による海岸林の減少割合を基に被害状況を評価しました。その結果、広葉樹とクロマツの混交林がクロマツ単植林よりも津波に対する脆弱性が低いことが明らかになりました。さらに、混交林において、広葉樹種とクロマツの空間分布がより複雑な海岸林の方が単純な海岸林よりも、津波に対する脆弱性が低い可能性が示唆されました。以上の知見は、海岸林を混交林に移行することにより、津波による海岸林への被害が軽減される可能性を示唆しています。
青森県八甲田山系の山岳湿原群を対象に、昭和初期(1933年)と現在(2020年)の植物種組成の比較を行いました。昭和初期の植生インベントリは、当時全国的に行われた国有天然林植生調査の一部を使用し、古資料をデジタル化することで、データを構築しました。結果、昭和初期から現在にかけて、山岳湿原群の植生は、非湿原性種および木本種の分布する湿原が増えていることがわかりました。この植生変化は、昭和初期から現在にかけての温度上昇による、春季の乾燥化や生育期間の延長に起因している可能性が示唆されました。世界における気温上昇が加速する以前からの植生変化を記載した数少ない研究として位置づけることができます。
都市街路空間は概して、舗装された路面が目立つため、街路の植え込みや街路樹下部などの一部を除き、自発植生(植えられた植物ではなく、自発的に生育する植物)はあまり存在しないと認識されがちです。自発植生が仮に存在したとしても、人や車の移動に伴う種子散布や定着環境など、人為影響の受けやすさから、そのほとんどが外来植物である可能性が予想されます。この研究では、この一見忘れられがちな都市の街路空間において、街路の植え込みや街路樹下部のような土壌に覆われた基質表面だけでなく、アスファルトの割れ目、舗装された歩道、街路と建造物敷地を隔てる壁面など人工的な基質表面にも着目し、自発植生の多様性がどのように分布するのかを検証しました。その結果、街路空間のさまざまなハビタットを通して、外来種は必ずしも優占しないこと、また、ハビタットに特有に分布する自発的な植物種が数多く存在することが明らかとなりました。以上の知見は、都市の街路空間もさまざまな自発植生を支えうること、街路空間において多様なハビタットを創成することによって、街路を行き交う人間の目に触れる自発植生の多様性を担保できる可能性を示唆しています。
地球環境にとって基盤的な生態系機能である乾燥地の植物一次生産が、年々の気候条件(降水量、気温、乾燥度)およびその年間変動性にどのように駆動されているかを明らかにすることは喫緊の課題となっています。本研究は、気候変動に対する乾燥地の知られざる感受性の可視化に成功しました。年間降水量・気温・乾燥度とその年変動性に対する乾燥地生産性の感受性を広域に可視化し、乾燥度の高いモンゴル南部地域では年間の降水量が増加しても生産量は必ずしも増加せず、またモンゴル全域を通して年間の乾燥度が改善されても生産量は必ずしも増加しない、といった感受性を発見しました。成果は、気候変動に対する乾燥地の応答の正確な予測に貢献するとともに、乾燥地の牧畜業や農業を気候変動下でいかに持続的に行っていくかを検討する上で重要な科学的根拠となります。
R5年度は新たなメンバーを迎え、ユニットとしての活動の幅を拡げていく予定です。
博士課程後期4年の岩知道優樹が中心となって進めた研究成果の一部です。東京の人工的に造成された緑地における植物群集が時間と共に残存する緑地に似通ることを明らかにしました。
本研究では、造成緑地における植物の種組成や多様性の時間的な変化を造成年代の異なる生息地を調査することで明らかにしました。その結果、造成されてから約130年で残存緑地の植物種組成に類似する可能性を明らかにしました。
【乾燥地の自然とその人間との関わり】
【高山の自然とその利用と保全】
【都市の自然とその人間との関わり】
【農のあり方を考える】
【人と自然の関わりを俯瞰する】
「令和5年度」
-高密度市街地における非公式緑地が人々にもたらすもの
-刈り高の違いによる里山林床植生への影響-種および機能形質から考える-
-Impact of campus-based greenspace exposure on college students' mental well-being: a systematic review
-東京都周辺の都市公園における夜間の昆虫群集組成の変化
「令和4年度」
-海岸防災林の植栽密度および単植・混植による津波被害度の違い
-都市近郊の里山環境の利用様式による植物種組成の比較
「令和3年度」
-動画共有サービスにおける鳥類がもたらす文化的生態系サービスの評価
-利用者の訪問動機・満足度に基づく主要な国立公園の観光スポットの魅力度評価
-COVID-19パンデミック前後での大都市住民の緑地利用と主観的健康度の関係
「令和2年度」
-日本国内における過去40年間の土地利用と植生被覆の変化:人口変動との関連性の考察
-横浜市における台風による街路樹被害の実態
-山岳湿原の泥炭微生物組成の決定要因
「令和1年度」
-自然と一体になった文化財の指標による評価:都市域の神社と社叢林に着目して
-生物多様性に対する人々の知覚とその要因:都市公園と自然公園における検証
-標高の異なる山岳湿原群の植物送粉昆虫ネットワーク構造の検証
「平成30年度」
-湿原植物群集組成の10年間の変化とその要因
-湿原の減少・分断化と湿原植物の多様性:局所絶滅の遅れに着目して
-高密度都市空間の街路樹に対する人々の知覚の規定要因:みなとみらい地区を事例に
「平成29年度」
-里山の市民利用により創出される文化的生態系サービスの評価
-内モンゴル草原における植物種多様性の変化が地上部節足動物群集の多様性に与える影響
「令和5年度」
-Contributions of urban greenspace types to the subjective well-being before and during COVID-19
-Destination-explicit analysis of tourist satisfaction and its determinants in major Japanese national parks
-Changes in plant functional traits driven by grazing and climate in Mongolian grasslands
「令和4年度」
-Overlooked diversity of spontaneous plants in urban streetscapes in Oulu and Yokohama
-都市化がもたらした東京大都市圏の残存緑地の生物相の長期変化
-山岳湿原における昭和初期からの植生変化とその生態学的プロセスについて
-生物多様性の変化が人獣共通感染症の感染リスクに与える影響
-Plant and soil microbial community assembly processes across urban vacant lots
「令和3年度」
-Spatial scales and urban greenspace types influence conservation awareness of the public: towards effective management of urban landscapes
-山岳湿原における生物地理学的要因・環境要因が植物–送粉相互作用に与える影響
「令和2年度」
-Plant functional rarity across different land use types in the megacity of Tokyo
-山岳湿原における雪解け時期の違いと植物種組成・多様性との関係
-自然草原における複数栄養段階を考慮した生物多様性効果の検証
-種分布と湿原面積減少の空間パターンから湿原生態系の多様性変化を予測する
「令和1年度」
-湿原生態系における花フェノロジーを規定する環境要因:ドローンと深層学習を用いて
-訪花昆虫を介した植物多様性による種子生産への影響:植物の除去操作実験による検証
-モンゴル草原における複合的な気候変動と多様性の実験操作による炭素動態への影響
「平成30年度」
-都市近郊の里山環境の公園利用が創出する生物多様性とその要因
-自然番組情報を用いた間接的な文化的生態系サービスの可視化~ビッグデータマイニングから~
「令和5年度9月修了」
-Biodiversity-stability relationships under global change drivers in dryland ecosystems
「令和4年度3月修了」
-Local and landscape drivers of plant diversity and composition in urban greenspaces
エヌエス環境
応用地質
科学技術振興機構
KDDI
KOA
新エネルギー・産業技術総合開発機構
東京建物
日税グループ
日揮
日本工営
日本HP
野村総合研究所
パシフィックコンサルタンツ
パナソニック・システムソリューションズ・ジャパン
物質・材料研究機構
三井住友信託銀行
名鉄都市開発
UR都市機構
ワールド
横浜国立大学大学院環境情報研究院 佐々木研究室
研究室の場所:環境情報4号棟315号室 MAP
メール:sasaki-takehiro-kw(at)ynu.ac.jp(佐々木)
〒240-8501
神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79-7
環境情報4号棟315 佐々木研究室